日 時:2020年10月18日(日)10:00~13:00
報告者:宮下和洋さん
テーマ:「特別支援学校高等部の社会科
~北海道の地理を通して学んでほしい力~」
内 容:
北海道の地理(北海道の特色や米作りの歴史、アイヌ民族の文化など)を題材に学習をしました。
卒業後、進学でなく就労という進路に進み、社会で生きる軽度知的障害の高等部の生徒が、北海道の地理を通して何を学び、感じたのかを報告したいと思います。
*今回の講座もZoomでおこないます。
参加を希望される方は、下記のアドレスに御連絡下さい。
近づきましたら、資料とURLをお送りします。
takako-ashibi@amail.plala.or.jp
1.講座概要
<テーマ>特別支援学校高等部の社会科~北海道の地理の授業報告~
<報告者>宮下和洋さん(特別支援学校高等部教員)
2.参加者数:13名
内訳…大学生:4名 小学校教員(元を含む):2名 中学校教員:3名 高校教員:2名 特別支援学校教員:2名
3.参加者の感想
(1)生活中心の総合的な学習活動というのは特別支援学校に限らず、他の教科との関連性を取るという点でも大事だと考えました。生徒に「なんで?」と疑問に思わせる導入から入り、授業中の問いはクローズドクエスチョンにするという特別支援学校において生徒が授業参加をしやすくする工夫なども、多くの場面で活かせるなと考えました。
先生方のお話のなかで、特別支援学校に行かず普通の高校に進学し途中で退学してしまう生徒のお話もありました。特別支援学校に良くないイメージを持っている人が多いのだろうなと思いました。一番大切なのは、「生徒や保護者がどうしたいか」、特に生徒自身がどんな進路に進みたいかを聴くことが大事というのが印象的でした。教員になった際には、生徒や保護者の考えや言葉に耳を傾けられるようになりたいです。
後半は、「北海道の地理」の実践内容でしたが、調べることの支援や、感想や意見を書かせる点がとても勉強になりました。生徒が疑問に思った内容を学習していくことで、千葉県から離れた、北海道との関係性、農業の実態などが学べるということが理解できました。また、アイヌ文化について、身近なアイヌ語から触れて、最後は異文化理解にまでつなげることができ、とても勉強になりました。生徒にとってなじみのない文化を、身近な言葉から入ることで急に遠い存在ではなくなるのだと考えました。
五感で体験する授業づくり、そして、生徒に「楽しかった」と思ってもらえる授業づくりをしたいなと考えました。
(2)特別支援を専門とする視点からの教育に対する姿勢や考え方について多くのことを学ぶことができました。特に、授業をするときに気を付けているポイントについては、教科や校種を問わずとても大切なもので、自分がどれくらいできているのかを振り返るきっかけになりました。自分自身は現在通常学級を担任していますが、特別支援教育について学ぶ中で、普段の指導や授業づくりにもつながるものを得られるということを感じました。明日の授業から、さっそく今回の講座で学んだことを生かしていきたいと思います。
(3)最も印象的だったのが、「社会を教えるでなく、社会で何を教えるか」という言葉です。知識を教えるのではなく、将来生活していく上で使えるような力を育てていくのだ、ということが大変勉強になりました。私自身、社会科の知識は十分とは言えませんが、社会科やそれに類する授業を通してどのようなことを伝えたいかということは明確にしていきたいと思うようになりました。
社会科授業の実践の中にも、たくさんの配慮や工夫点があり、生徒が楽しみながら興味を持って取り組んでいる様子が浮かんできました。実物や実際の体験と結び付けるということは、興味関心に繋がる上に理解にも繋がるという点で、私も来年以降工夫した授業作りを行っていきたいと思いました。
生徒一人一人の実態を的確に把握し、その実態に適した授業作り、教材研究をされているのだということがとてもよくわかりました。
(4)宮下さんの報告、いつもながらとても面白かったです。現場の様子がよくわかり、授業実践もていねいに取り組んでいることが伝わる報告でした。
北海道の地理学習は、生徒の関心を高める工夫がされていて、もっと知りたいという学習意欲をひきだすことができた実践ですね。米作りで品種改良に取り組んだ人物に焦点をあてたことや、アイヌ文化の紹介で興味を持たせるなど、小中学校でも生かせる授業ですね。情報検索の仕方や、わかったことを言葉や絵で表現する活動など、教科を越えた取り組みが織り込まれていて、成長に大事な経験を積んでいることがわかります。興味関心や理解の程度、表現力など、個人差があるというのは当たり前なのに、自分がふだん十分に配慮していないことを気づかされ、もっと意識しなければいけないなと反省しました。
北海道の農畜産業を掘り下げるなら、北海道産の野菜や乳製品の実物から始めて、その生産から活用の様子をリアルにつかませたいなと思います。北海道に限らず、千葉であれば、近くで野菜生産や酪農の現場に触れることもできるでしょうから、生産から収穫、食品加工、調理とつながった、見学や体験的な取り組みも可能ですね。作物や家畜とのふれあい、働く人の工夫と苦労、そして収穫の喜び、というのは、どの校種でも大事にしたいですね。北海道の農業高校を描いたマンガ「銀の匙~Silver
Spoon」は、授業にも生かせないですかね。
授業づくりという点でも、生徒の実態に応じた学習環境づくりという点でも、いろいろと考えることができました。一般の学校でも、一人一人に応じた学習計画が作れるような教育条件整備(学級定数削減と教員増!)が不可欠だと改めて感じました。
(5)今回は貴重なお話ありがとうございました。宮下さんの生徒保護者と何時間でも話を聞いていくという一教師としての真摯な人柄に感銘を受けました。また、特別支援学校のカリキュラムや教科書事情や入試のシステムなど知るきっかけになりました。
年間に授業が30時間くらいしかない限られた中で、どのような授業を展開していくのか全体像を見せていただいたので、とても勉強になりました。
先生がアイヌの楽器を買って、練習して提示していくという姿勢が素晴らしいと思いました。特に、ゴールデンカムイは東京都の図書館は所蔵しているところが多いので借りてみることにしました。たくさんの質問に答えてくださり、ありがとうございました。
(6)高等部の特別支援学校には受験があり軽度の方が行く学校などといった分け方があることを初めて知りました。希望したら入れるものだと思っていました。次に、授業で大切にしていることに関して、宮下先生は9つの事をあげられていて自分でも新たな気づきがありました。見守ることと見極めること、違和感や不思議だなと思う事を大切にするなど全てに共通している部分もあり、とても興味深く聞かせていただきました。
そして、今回1番印象に残ったフレーズは家に帰って話したくなる授業を作るです。私は家に帰って家族などに授業の事を話すことは滅多にありませんがとても楽しかった授業や興味をそそられた授業などについては話すことがあります。私もそのような授業づくりをしていきたいと思いました。
今回の授業づくり講座では私が思っていた以上に特別支援学校教育の幅広さや柔軟性などが分かりました。宮下先生が勤務されている学校は比較的軽度な生徒が通っているという事でしたが授業づくりの工夫点を詳しく学ぶことが出来ました。
最後に、今回も温かく迎えていただきありがとうございました。とても参加しやすかったです。また、次回も宜しくお願いします。
(7)今回の講座では、宮下さんの実践から、特別支援教育とは実際にどのようなものであり、どのようなことを意識しているのかを学ぼうと思い、参加しました。実際に、通常級ではさほど意識しないであろう、しかし重要な観点がたくさんあると感じました。手を差し伸べるばかりではなく、時には敢えて突き放して考えさせること。社会科「を」教えるのではなく、社会科「で」教えること。生徒の得手不得手を考えて発問をしたり、教材研究をすること。特別支援に限らずに、社会科教育のあり方を学ぶことができました。
また、他の先生の質問の中で、「うちのクラスにも特別支援を受けた方が本人のためになるのではないかという子もいる」というお話があり、そこから通常級担当を希望する者にも特別支援教育が無縁なものではないのだと再認識しました。特別支援のあり方と、通常級のあり方、そしてその双方が必要に応じて協力し合えるような教育体制を整えることは非常に重要だと感じましたし、そのようにできるようにアドバイザーのような役割を果たす方もいるという情報をお聞きすることができたのも、とても大きな学びでした。
4.報告者から
授業づくり講座の報告者として、地理の授業づくりの報告をさせていただくことはこれまでなかったので、とても緊張しましたが、皆様からたくさんの授業に対する助言や質問などをいただき、貴重な時間となりました。
改めて、授業をつくる時に、就労を目指す特別支援学校の生徒のための社会科とは何なのか教材のもつ魅力や教材観を考えながら今後も授業づくりにあたりたいと思いました。
参加者の方々から特別支援教育を必要とする生徒への対応の仕方や授業中の予期せぬ生徒の何気ない発言や考えから授業をどう展開していくのかなど、鋭い質問が多く、私自身がこんな時にどう対応したらよいかを考えさせられる場面がありました。まだまだ、多様な生徒にも対応できる特別支援教育の知識や支援方法、授業づくりの質を高めていかなければならないと痛感しました。
参加者してくださった学生さんの感想からも熱意が伝わり、今の学生さんの学びに対する意欲や情熱が素晴らしく、圧倒されました。自分ももっと頑張ります…
北海道の地理の授業づくりについては、皆様からのご指摘のとおり、やはりアイヌと開拓民の歴史ついて触れることができなかったのが一番の反省です。授業後の生徒たちの感想の中から、アイヌの歴史を知りたいという思いが出てきたことからも、生徒たちの学びたいという意欲をもっと大切にすべきだったと感じていますし、北海道の歴史の光と闇(←こう表現していいのかな?)について彼らにも知ってもらいたいと思いました。
アイヌと開拓民の歴史と合わせて、北海道の地理では、生産者の抱える問題・取り巻く現状も触れられるような時間も取りたいと感じました。石戸谷先生からのご助言にもあったマンガ「銀の匙」は、そのための一つの切り口として生徒にとってわかりやすい教材であると感じました。
生徒の資質・能力についての話では、土田先生から、「社会力」=主権者として社会を変えていく力を授業をとおして生徒に培うことができるとよいとご助言いただきました。特別支援学校の生徒でも、これからの日本&世界の未来をつくる大事な社会の一員として自分らしく、自信をもって自分の考えを主張したり、意思決定したりできるような大人になってもらいたいと思います。特に3学期にある公民の授業を中心に、生徒たちと一緒に「より良い社会を築くためには?」を考えていける授業をつくっていきたいと思います。
【授業づくり講座の予定の変更につきまして】
コロナ感染者数の増大に伴いまして、これからの授業づくり講座を、どのようにおこなっていこうか、と実行委員会で話し合いました。会場が当面は使えないことと、都心に集まることが難しいためです。
まず、年間計画表は、ひとまず白紙に戻します。そのつど、お知らせしてまいりますので、よろしくお願いいたします。