日 時:2013年1月19日(土)18:30~
場 所:筑波大学附属駒場中・高等学校
報告者:金子万里子さん
内 容:「日本中世の産業・経済をどう教えるか」
鎌倉・室町時代の産業や経済について、生徒が興味を持ちながら学んでいけるようにするには、どういった教材を準備し、どのように展開したらよいでしょうか。金子さんの実践をもとにアイデアを出し合いましょう。
会場から(2013.2.3掲載)
金子さんの実践は鎌倉・室町時代の産業や経済を、史料や絵画を活用しながら、できるだけ生徒に具体的なイメージを持たせて、学ばせようというものでした。金子さんの迷いを共有しつつ、参加者がそれぞれの経験を紹介し合いながら、議論しました。
感想
◆議論の後半で、中学生が現代の職業をあまり知らないという指摘があったのですが、職業体験やレポートを書いていたときの生徒の顔が思い浮かび、納得しました。各時代の産業・経済を授業で扱うとき、農業の経験がない教員が生徒に何をどう伝えるかということは意識していたのですが、はたらくことそのものについては、あまり配慮できていなかったなと感じます。
『一遍上人絵伝』や『職人歌合絵巻』等で、はたらく人びとを見たとき、生徒たちはどんな感想を持ったのだろう、と気になり始めました。今後の授業づくりに活かしたいです。ありがとうございました。(I)
◆どうしたら生徒を引付ける授業づくりができるか、という教員誰しも考える問題を教材づくりを軸に検討したレポートでした。『一遍上人絵伝』や『職人歌合絵巻』などの絵画資料や、「阿氐河荘上村百姓等言上状」などの史料などの提示の仕方などを話題にしながら、校種ごとの授業展開の違いや、実物資料への接続の仕方などが話し合われました。金子さんが「農民像が『訴え』や『一揆』等に偏り、『闘う』『苦しむ』農民のイメージが大きくなりがち」ではないかと感じ、「当時の日常生活のイメージ」をふくらませるため、稲作の具体的様子などを丁寧に授業化しようとしている点が、歴史を生徒の「日常」や「生活」と切り結ぶ地平で、一面的でなく多面的な民衆理解、社会理解を進めようとしていると感じ、とても大切な授業作りだと思いました。ありがとうございました。(O)
◆今回の議題では、日本の中世における産業・経済について学ぶことを主題とする上で、庶民および農村民の生活上の営みを、いかに生徒たちに身近なものとして提示できるか、新たな視点から考えを深める貴重な機会を頂戴いたしました。
授業実践における資料に提示される中世の農民、一般庶民の姿は、ただ支配者層からの圧政や搾取に苦しむだけの存在ではなく、自ら能動的に法的手段に訴えたり、労働環境においても、楽器等を用いて積極的に向日的な雰囲気を演出するなど、農民の生活の知恵や、根源的なたくましさを実感させてくれるものでした。
また女性が主体性をもって社会に関与し、自らの生きる場をしなやかに作り出そうと働きかけている様子を、資料に基づきながら歴史的事実として学ぶことができることも含めて、生徒たちはこの授業において、歴史的文脈における庶民の実像に積極的な意味と価値を見出すことができるでしょう。
歴史を学習することが、必ずしも歴史上の反省的な視点でのみ捉えられるものではなく、本来人口構成上においてもマジョリティである被支配者を主役とするアプローチが、生徒たちの興味、関心を内側から引き出す為の契機となりうることに気づかせて頂きました。本当に有り難うございました。(M)