2009年度の活動を紹介します。
1月例会報告
日時: 2010年1月16日(土)14:00~16:30
場所: 浅川市民センター
テーマ: 小学校高学年の実践報告
報告者: 西村美智子さん(私立啓明学園初等学校)
内容: 同じ地球に生きる私たち~「つながり」を感じる授業を創る~
報告:2010年の幕開けは、私立小学校に勤務する西村先生の実践報告でした。今回のスケールの大きな実践はどのような考えに基づくものなのか。どういう授業になっていったのか。学力観をどうとらえるのか。初参加の方も加わり、今月も学びの時間が始まりました。
今回の報告では「子どもが主体的に考え、意見を述べられるか」という授業のねらいや評価についてのこだわりも提案してくださいました。その根底には、「学力」とは何か、何をもって「学力向上」がなされたというのか、今ほどその問題について考えざるを得ない時はない、という西村先生の強い思いを見ることができました。
先生は2学期までに、世界の様々な人々との出会いを通して、子ども達に「貧困の中の子どもたちと私たち」を考えさせる研究授業に取り組まれました。遠くの国の出来事を自分達の生活につなげて考えるにはどうするか。新聞やニュース、TV番組やユニセフの資料、知り合いから保護者までをゲストにして、授業のきっかけにしていく。こうした授業展開は年間を通じて初めから全て計画できることではありません。しかし、その時の社会情勢や子どもの様子、保護者のつながり、を見渡して子ども達に最善の教材を探し出そうとする、先生のたゆまぬ努力が、「人のつながり」・「教材のつながり」を生み出すのです。
こうした展開の中から、「子どもの権利条約」を教材にすることになりました。授業でこの条約を知った子ども達は、条約と自分の今をつなげて考えるようになりました。自然に子ども達は自分が気になることに近い条約を選ぶのです。子ども達は自分と教材がつながります。そして授業でお互いの考えを出し合うことで、自分と仲間がつながります。また家で授業の話題をすることで、自分と親とがつながります。これらのつながりが「学びの連鎖」を生み出します。まさに、授業が「集団作り、学級作り」を支えていくのです。
12月例会報告
日時:12月5日(土) 14:00~16:30
場所:浅川市民センター
内容:高校の社会科授業実践報告
講師:若林徹さん
テーマ:現代社会で気づいて考える国民・国歌・法律
そしてそしてそれを越える人々の思いと現実
報告:12月の例会は久しぶりに高校の実践報告でした。報告者のこの春から都立高校に移られた若林先生。この報告は、前任校の私立高校での実践でした。
公立・私立学校の違いも感じながら、御自分で工夫して作り上げてきた授業の柱はいつも、「生徒達の授業への興味関心を高めること」でした。講義調の授業では眠りへの誘いになってしまいかねません。先生は、目の前の子ども達が主体的に授業に関わるために、日夜あらゆる情報を教材化できないかを考えていました。この日の報告資料にも、マンガ・アニメ・コラム・映画と、子ども達が興味関心をひくようなものがあふれていました。参加者もその資料にぐいぐい釘付けになりました。資料を見ているところへ、先生の良く通る声が天から響き渡るという、眠る暇なんか絶対に無い素敵な授業が見えてきたのでした。
【生徒と作り上げる授業】
進学校で受験に関係ない科目「現代社会」。この授業を担当することになった若林先生は、「授業に参加しない生徒」を「能動的な学びの大切さに気付く生徒」へと変えていくことに苦心されました。そのためには、まず教材開発です。もちろん教科書を使うことは前提ですが、それだけでは到底「参加しない生徒」にとっては自分の学びにはなりません。
そこで、先生は生徒達の身の回りにある情報を教材として加えることを怠りませんでした。それは単に生徒達に興味関心を持たせるためのものではなく、授業の中で主力となる教材にしていくことを目指していました。そうすることで、生徒達は「教室での学びが人間としての根元な学び」、「現代を生きる自分達の課題に答える学び」と気付くようになると先生は考えていたのです。
こう書くとなんだか授業論としては当たり前のことですが、実はそれがなかなかできないでいる先生が多いということなのです。(自分も含めて)授業という学びの機会を、教師が十分に活用できていないのではないか、と報告を聞きながら自責の念にかられる記録者でした。(涙)
こうして、スタートは先生からの投げかけの授業でしたが、次第に生徒達から「ねえ、この問題はどうなっていくの?」と問題を意識する発言が増え始め、授業は生徒が学習課題を発見し、それを先生がサポートしながら次の課題発見へと向かう授業になっていったのです。そのことは生徒達の授業コメントやお手紙を見ても明らかでした。「先生の授業面白かった」というコメントの多さ。それはお笑い芸人のような表面的な面白さではなく、知の欲求を満たされたという満足感から来る生徒達の正直な感想でした。
参加者が一番びっくりしたのは、保護者からも感謝の手紙が来ていることです。子どもの積極的な学びが親をも動かすということがわかりました。中には、この授業のおかげで大学の進路まで変えた生徒もいたそうで、教師の授業の影響って大きいのだとあらためて感じるとともに、日常の自分を戒めるいい機会となりました。 つづく
11月例会報告
日時: 11月 日(土) 14:00~16:30
場所: 浅川市民センター
テーマ: 6年生の授業実践報告
内容: 私立小学校で学年を組んでいる6年生の先生2人(若手・中堅)が、「戦国時代」を3時間で教えるにはどういう授業を作るか。いつもは打ち合わせをして、同じ資料を使って授業をするのですが、ここは思い切って事前の打ち合わせ無しでそれぞれで進めるという実験的授業報告でした。
報告: A:ある一つの例を通して戦国時代を捉えさせる授業展開
◎戦国時代のふりかえりをする
①授業のノート
②「天下統一」作戦
③「赤いくし」
④プリント「八王子城落ちる」
⑤武将について調べたこと
◎「戦国時代を生きること」について、自分の学んだこと、感じたこと、考えたことをまとめなさい
(1)戦国時代の人々はどのように生きたのか
・大名の立場から
・他の人の立場から
(農民、女、子ども等、一つでもよいし、
いくつかの立場を書いてもよい)
(2)もしも自分だったら、戦国時代をどの様に生きたいか
・大名の立場から、他の立場から、どちらでも、
両方でもよい。
・自分が戦国時代の学びを通して感じたことを、
自由に書きましょう。
(3)歴史の中での「戦国時代」の意味を考える
●次のことを、とくによくふりかえって、
考えながらまとめましょう。
・歴史の中で、戦国時代はなぜ始まったのか
・戦国時代を通して、世の中はどう変わったのか
・天下統一は、歴史の上でどんな意味を持つのか
問.戦国時代なんてなければよかったのか、あったほうがよかったのか
○あった方がよい
・この時代のおかげで、天下統一に結びついたのだから。
・戦国の時代は、権力に従うだけの世の中の終わりだから、
意味がある。
・人間どこかで戦わないと、一つになれないのかも。
本当のリーダーが出現して良い事。
・この時代だけでなく戦争をくり返している。
今は平和だけど、そう思うと怖い。
・誰か一人が権力を全て持つのは危険。天皇も、首相も。
でもリーダーは必要。
●なかったほうがよい
・たくさんの人が死んだから。
・なかったら、いつかおこるだけだと思う。
B:戦国大名は日本中にいたことを意識させる授業展開
この授業では、様々な戦国大名の生き様を知り、どの大名が気に入ったか、そして自分だったらどう生きたか、という意見を出し合いました。結果クラスの4割が「逃げる」、「だれもいないところでくらしたい」と答えたのでした。戦国大名の辛さはわかったものの、天下統一よりも静かにくらしたいという子どもが多くいたことについて、この時代の受け取り方はいかがなものか?と授業者からの悩みをみんなで話し合いました。こういう悩み相談ができるのも、例会の良いところです。何回も自分の授業を他の人に見てもらう、聞いてもらう、考えてもらう、そこでまた一段授業のレベルが上がっていくのですよね。
10月例会報告
日時:10月25日(日) 10:00集合 15:00解散
場所:京王駅高尾駅南口改札付近
テーマ:ハイキング~「浅川の歴史遺産を歩く」
~「浅川地下壕の保存をすすめる会」とのコラボレーション!!~
9月例会報告
日時:9月19日(土) 14:00~16:30
場所:浅川市民センター
テーマ:社会科入門講座
講師:遠藤茂さん(千葉歴教協)
「入門期の3年生社会科の考え方」、「教材研究」、「学習の展開」、「授業実践」、「資料の活用」、「学習のまとめ」、「高学年社会科への基礎作り」と、本当に多岐に渡るお話をいただき、参加者は感動と興奮の2時間でした。
1.入門期の指導
3年生の社会科をしっかり取り組むということはどういうことか。3年生に社会認識を育てることの大切さをお話くださいました。ポイントは3つありました。言われてみると、わかっていたようで、授業では抜けていることかもしれないと感じることばかり。やはり授業者たるものは、時々こうしてふりかえり、再認識しなければいけません。
2.3年生最初の指導の注意点
注意点は3点ほどあります。①見える ②見る ③記憶に残す。それぞれ子ども達にどう指導していくか、実はこれは子どもの問題ではなく、教師側の問題なんですね。これは目から鱗な事ばかり。参加者達も「はぁ~そういえば」と悪い例を思い起こしました。
3.学区の様子を観察する
学区の観察は公立学校では当たり前のことですが、昔に比べて地域を歩かなくなった教師が増え、地域教材の開発に時間と手間をかけたがらなくなっていると聞きます。しかし、それでは授業が盛り上がらないのは・・・当たり前なのですね。
八王子支部には私立小学校の先生も参加していて、この通りに行かない場合についても意見交換がなされました。遠藤先生からは、観察のポイントを5つに絞ってお話いただきました。
4.地図指導入門
そしていよいよ地図のかかせ方に入ります。遠藤先生の過去の実践をふりかえってみても、何度やっても、何も指導されないままでは地図はかけないといいます。先生は導入で、「それじゃあ、先生がみんなに家に家庭訪問に行きます。先生が学校からみんなの家に迷わないで行けるようにかいてください。」と語りかけます。3年生の子ども達は一生懸命にかくのですが、まるで初めてのお買い物のように、「自分がカメラをもっている」ような目線で地図を描きます。これは記憶をたどって目の前の空間だけを意識しているからではないでしょうか、と先生は言います。
そうして始まった子どもの地図は、主に4つの指導を入れていくと、見違えるように変わります。これには参加者達もびっくり。子どもの地図はまるでテレビ番組にもある「ビフォー・アフター」そのものです。恐れ入りました。ここまで変わるのですね。
5.4年生の地図指導
3年生の地図学習がしっかりしていると、4年生はさらに3つのポイントで地図理解を深めることできるそうです。特に「等高線」と「縮尺」は地図上の想像ではなく、本当の地形や距離を表しているのだと子ども達に読みとらせることが大切です。
6.3年生の社会科は地域学習
講義のまとめに入りました。ここでは、7つの項目にわけて、地域学習の考え方や進め方をお話下さいました、子どもにとって、「学区=地域」ではない。子どもが触れあった人々が暮らす場所が地域である。だから子どもが想像力を働かせるような教材を用意するのが教師の役目なのですと言うお話に、ただただうなずく参加者達。
7.地域教材の開発
「地域学習とは、ものに込められたその人達の願いや思いを子ども達に伝えていくことに意味がある。」
このことを力説する遠藤先生は、「3年生社会科の地域学習は教科書や副読本が無いから大変なのか?自分で構想できるから面白いのか?そこが分かれ目だ」ともお話くださいました。「今日の明日にできるような教材ではないのです。自分の勤務校の周囲を歩いて、資料を積み重ねて、2~3年を目安に地域学習を行う計画をたてる気構えが必要です。逆に言えば、「地域学習を構想できる教師は、全ての教科の教材研究と学習計画を作ることができる。」とぴしゃりと言ってのけました。(参りました!)
8.保護者の協力で地域学習を豊かに
教師以上の教師、それは地域に古くから生活する保護者の皆さんです。この方々を授業に協力してもらうことも大切です。遠藤先生の保護者活用7つのポイントをうかがい、早速実践してみようという現在3年を担任する先生もいらっしゃいました。
9.授業を作る
実際に遠藤先生が行った授業実践例を紹介していただきました。授業で使った模造紙や子ども達の作品も公開していただき、まさに目の前に遠藤学級が出現した感じでした。優れた実践が出来る教師は、こうして「自分の授業の世界を再現できるもの」ですね。
(1)3年生の地図学習(2カ所の実践例)
「地図を見て、そこから何が見えてくるか」
子ども達が実際に歩いてみた学区。その周辺。そこには必ず疑問や不思議が眠っています。教師がそれを引き出し、授業の学習課題に設定できれば、授業は半分成功です!地域に目を向ける子ども達は、県・国へと視点を広げていける子どもになっていきます。
(2)3・4年生の昔さがし (3つの実践例)
「①大きな村があった地域 ②小規模な村があった地域 ③新しく成立した地域」
の3つのパターンに分けて昔さがしの実践例を紹介。ここでも祖父母や土地の人、老人会なども巻き込んで学習を展開していけると、その授業が子どもとより密接になり、よりダイナミックな実践になることが多いといいます。遠藤先生が実際に行った授業の様子やエッセンスをたっぷりと伝授していただきました。(参加者達がいつもよりメモの分量が多くなったのもわかります。)
<まとめ>
遠藤先生のお話はとてもよくまとまった内容で、実践ポイントがはっきりしていました。それさえわかればもう授業は・・・というわけではありませんが、授業者がその視点をもっているか、そのポイントを押さえているか、という大事な指摘がたくさんありました。
厳しい言い方かもしれませんが、3年生の地域学習がうまくいかないのは、子どもや地域のせいではなく、教師の問題だということがはっきり見えています。しかし、その地域にずっと生活しているわけではない教師の授業には、元々限界があります。
そこで、「地域の人・保護者・地域行政などと連携して授業を進めること」が必要なのでしょう。わかっているようで、なかなかできないこと。でもやらないといけないこと。
子ども達のための授業作りのコツは、このような小さなことの積み重ねにあることを、深く深く思いました。
授業を通して作り上げた3年生の作品も紹介していただきました。3年生でも教師の技でここまでできるのかとただ驚くばかりでした。
7月例会報告
日時:7月4日(土) 14:00~16:30
場所:浅川市民センター
テーマ:授業づくり講座
講師:栗原戦三さん
内容:今回は、授業作りに必要な教材研究や、夏休みにできる資料集め、など社会科の授業をどう作っていくかを、講師と参加者全員で考えていく例会になります。
毎日の授業で困っている方や、長期休みのうまい使い方をお悩みの方はぜひ参加して下さい。この機会に、OB・OGの方々やベテランの先生方から、お知恵を伝授していただきましょう。
報告:八王子城攻めをどう教えていくか?そんな講座に多くの参加者がありました。栗原さんの手作り教材にみんな見入って真剣に話を聞きました。途中で歴史地理教育も登場し、私達の身の回りには本当にたくさんの教材のヒントがあることを再認識しました。大河ドラマ直江兼続も、立派な教材です。
6月例会報告
日時:6月20日(土)
14:00~16:30
場所:浅川市民センター
テーマ:授業実践報告
「6年生 戦争と平和の学習から」
~聞き、学び、調べ、考えたこと~
講師:高田真澄さん
内容:☆絵本製作(卒業論文)という
まとめ方
1章 父母・曽祖父・曾祖母から
聞いたこと
2章 戦争について自分で調べたこと
3章 学習してわかったこと、
思ったこと
4章 私の考えた憲法3条
5章 私のかんがえたこと
1章 子どもたちの家族を巻き込んだ聞き取り
家族の戦争を憎む言葉に子どもたちは、心を動かされる。
例 ひいおばあちゃんの言葉
「戦争は、戦後63年も過ぎているのにまだ解決できない問題があるよね。人の心までもだめにした戦争は自分の意見も言えない絶対服従の中で行われました。民主主義でないよね。それだけの犠牲の上にたって戦争は行われていたか、良く考えて学習してください。」
2章 子どもたちが調べたこと
・召集令状、標準服、国防婦人会、戦争中の標語、金属の供出、
中国残留孤児、疎開、東京大空襲、勤労奉仕など
話を聞くだけでは、実際に知らない言葉、イメージの沸かない言葉も多く、調べてみないと具体的な事が見えてこないこともありました。そこで興味を持ったものについて資料を元にして調べてみたのです。ここにも子どもの学びの活動がありました。
3章 学習してわかったこと
満州事変から日中戦争、そしてアジア太平洋戦争へと泥沼化して広がる戦い。その被害は八王子空襲に代表されるように、一般市民の生活を、命を脅かしていきました。このような真実を知った子ども達が、改めて戦争の悲惨さと平和の大切さを考えました。
4章 子どもたちの考えた憲法
・戦争をしない
・人間はみな同じ
・教育を受ける権利
・選挙に参加
・結婚、離婚の自由など
※ 絵や写真などのビジュアル的なまとめ方は作文だけより子どもの心を引き付ける。
そして、インパクトのある作品に仕上がる。
※ 次に伝えることの大切さ 戦争体験を語れる人は少なくなってきている。子どもたちが絵本を作ることを通して感動を残し、絵本という物を媒介にして次の世代に伝えられないものか。
※ 過去(戦争)や現代(憲法)から未来(自分の夢)という大筋の絵本作りが良かった。
3学期に入り憲法の学習をしました。明治の初期に、憲法を作ろうという草の根学習会の高まりの中で考えられた憲法草案と良く似ていた「日本国憲法」。その条文の主なものを説明した後、各自「私の考えた憲法3条」を作ってみました。
時間が充分になかったことと、今の平和な暮らしが当たり前と思っていたためか、「基本的人権」の内容が多かった気がします。国が前面に出てこないで、普通の人、「私たち」を主語に使っています。外国人と日本人の区別もありません。
5月例会報告
日時: 5月16日(土)10:00~16:00
テーマ: 八王子城フィールドワーク
講師: 栗原戦三さん(八王子歴教協会員)
内容: <『まゆだま』No.329より抜粋>
~GW明けの5月の土曜日。今月の例会には、一般の親子も参加してくださり、市民にも幅広く啓蒙できる活動の広がりを感じることができました。~
5月はフィールドワーク。八王子城を訪れました。歴教協の活動では「知識的なことを学ぶ」だけでなく、この城を実際に体験して、授業の教材にどう活かすか、戦国の世についての「歴史認識をどう深めるか」を大切に考えています。
絶好のハイキング日和となった5月の例会。土曜日朝九時過ぎの高尾駅の北口はまるで立川駅か新宿駅かといった様相。中央線からあふれ出る人・人・人で辺りは大混雑。カラフルな旗を持って立つハイキング同好会に負けじと、目立つ赤い帽子でたたずむのは、今回の案内人、栗原さんその人でした。
バスで途中の「霊園前」で降りると、そこには八王子城が学区域というその名も八王子市立「城山小学校」の先生がお待ちでした。と、その後ろから「先生~♪」という子どもの声が。聞けば城山小の先生が、6年生の子ども達に例会の案内をしてくださっていたとか。それを聞いて、6年生と2年生の姉弟とおじいさまが我々と一緒に参加してくださることになったのです。
おじいちゃんに手をひかれ、栗原さんの説明にじっと聞き入る男の子。話の中に授業に役立つために、必ずイラストや地図を入れて説明してくれたので、小学校2年生でも飽きずに参加できたようです。やはり資料の力はすごいです。
子どもに負けじと参加した教師達も一生懸命に解説を聞き、メモをとり、実物を見て、感動しました。それを授業にどう活かしたらよいかを考えながら。気がつくと、この日はみんな社会科見学をする子どもの気持ちになっていました。
登り初めて30分。「金子曲輪」に着きました。ここは、家来の住居跡。この山の上で普通の暮らしがあり、馬が駆け回っていた。という説明を聞くと、「へえ、水はどうしたのかな?」、「食料はどの道からあげたのかな?」、「何日分くらいあったのかな?」と疑問が次々に湧き出てきます。これはまさに社会科の授業で出てくる子どもの思い。これぞ授業!
さらに登って山頂付近にきました。時間はもう13時。お腹はぺこぺこなのに、2年生の男の子はまだ資料にカメラを向ける元気!こうして子どもが夢中になってしまうような話の仕方も、実はこの日の栗原さんから学ぶことができました。やはり、話し方というのも長年の経験で培われてきた教師の資質です。(こういう技術も学び取れるのが例会です。やはり参加すると昨日の自分よりもレベルが上がるのです!)
昼食後、頂上から山の中をレクチャーを受けながら中腹までやってきました。この歴教協八王子支部のシンボルともいえる八王子城の引橋です。月刊「まゆだま」の表紙イラストにもありますが、それをイラストに描いたのがこの城に何十回も登っている栗原さんです。しかし、八王子城のブックレットによると、何とこの城に2000回以上登っている地元の人もいるとか。 また、今回の参加者の中にも昔この城で遺跡を発掘したという方もいらして、地域に根ざすということがよくわかりました。実際に歩き回ることで山城の生活の工夫や大変さもわかりました。”自分の足で歩く”って大切ですね。
こうして1日かけて山をめぐった”フィールドワーク”は、御主殿跡地でのふりかえり。ここでも2年生と6年生の子ども達は資料を食い入るように見ながら話に聞き入っていました。大人顔負け。将来の歴史オタクになるかも。だって・・・、栗原さんと男の子は、同じ赤い帽子だったのですから・・・笑
4月例会報告
テーマ: 社会科入門講座
講 師: 山田麗子さん(歴教協常任委員)
日 時: 4月18日(土)14:00~16:30
場 所: 浅川市民センター
内 容: 2009年度の4月の例会は、社会科入門講座。ここ数年の4月例会はこのパターンで、授業開きの役に立つ、自身の実践をふりかえる研修になるようにと企画しています。
今回の講師は、埼玉県の公立中学校で長い間社会科の教師を務め、教科以外に生徒会活動や平和教育にも取り組んできた実践家で、現在は本部常任委員の山田麗子さん。歴史教育の広い、そして深いお話・お考えを伺いました。
山田さんのお話は、単に社会科の授業をどうするかだけではなく、授業を通じて学級経営の基礎をどう作るかについてのお話や、生徒会活動を長年されてきた経験から、学級経営を基盤にした授業作りというお話まで、大変中身の濃い学びとなりました。(教員の仕事はこの両輪をバランス良く行うことですものね。あらためてそれを確信した参加者達!)
八王子支部は小学校の先生も多く参加しますが、山田さんの実践は決して中学校だけのものではなく、教師としての取り組み方の本質を明示してくださったようです。
年々忙しさを増す教育現場で、なかなか新しい先生の参加は増えていきませんが、今回も先輩方の参加が多数あり、この会がいろいろな方によって支えられていることをあらためて実感しています。こうした”先輩から学ぶ”という教員文化の伝承も大切なことですね。
さて、山田さんからはこれまでの実践を5つに分け、順にお話を伺いました。熱い思いで語る姿に、参加者は”山田ワールド”へと引き込まれていきました。
1 証言をもとにした平和学習にたどりつくまで
●ヒロシマ・ナガサキ・核廃絶を考える実践
2 祖父母とアジアの証言から学ぶ
●つながりのある授業~討論学習の実践
3 社会科における証言学習の威力と限界
●子ども達から「なぜ?」を引き出す実践
4 平和学習にある「力」を確かなものにするために
●未来につながる平和教育~これからの学び方とは
5 日中韓の歴史教育交流 ←今はこの活動をされてます
●互いに自国史中心主義を乗り越えた先にあるもの
山田さんの報告は、「自身の平和教育が生徒を変える働きのある素晴らしいものだった」という内容だけでなく、実践を続けていく中で様々な疑問や壁が出てきたということを教えてくれました。「平和教育は学校でしか効果がないのか、児童・生徒・学生でいる間は感じることはあっても、その思いは、社会に出たら市場原理に駆逐されてしまうのでは。」
この時点で山田さんの目は、学校を越えた現実社会そのものに注がれていたのです。
子ども達の先にある社会生活の中でも消えることなく生き続けていく「平和構築の力」を、学校教育で身につけるためにはどうすればよいか。山田さんは自らその世界に腰を据えて今日も考え続けています。教師をしていたからこそわかる、学校教育の理想と限界。それを私たち現役教師は、時々立ち止まって考える必要があると改めて教えられました。