日本史部会2012年12月例会・感想

日 時:2012年12月8日(土)18:30~

場 所:筑波大学附属駒場中・高等学校

内 容:持ち寄り議論 「12月8日をどう教えるか」

 今回は、対米英蘭開戦前後をどう授業で扱うかを、参加者が材料を持ち寄って議論しようという企画です。何度も授業をしてきた方も、まだ一度もしていない方も奮ってご参加ください。


会場から (2013.1.12掲載)

 12月例会の日付が8日ということで、アジア太平洋戦争開戦をどのように教えてきたか、参加者の実践を紹介し合いました。

 「アメリカに負けた戦争」というイメージを持つ子どもたちが多い現実を受けて、真珠湾攻撃だけでなくマレー半島上陸について具体的に扱うこと、中国との戦争の実態をより具体化していくこと、などが論点として提示されました。また、『教えられなかった戦争 マレー編』の映像を一部鑑賞し、授業でどのように使えるか、議論をしました。

 「自虐史観」ということばの影響力が増している状況下で、日本の加害事実をどのように子どもたちに提示し、考える材料としていくのか。今後はさらに注意深く吟味、検討した上で授業に臨まねばならないでしょう。

 

感想

◆今回は、「12月8日をどう教えるか」というテーマの例会でしたが、私自身まだ授業で扱ったことのない部分だったので、今後の授業づくりの参考にさせていただきました。

 第二次世界大戦以前より、数ヶ月・数週間間隔で目まぐるしく変化していく日本・世界の情勢、また教科書に書かれているたくさんの情報を扱う際、どうしても言葉の羅列だけになってしまうのではないかと思っていました。しかし、地図上で日本軍・連合国軍の攻撃進路を辿ったり、日本の転換期を探ったりといった実践をお聞きして、授業方法の視野が拡がりました。また、どういった視点で日本の戦争(太平洋戦争)について考えさせることができるか、大変参考になりました。

 今の若い人たちは、日本の戦争といったら「広島・長崎の原爆」だという印象を強く持っている(その印象しか持っていない)ということでしたが、やはり終戦間際の日本の被害の部分だけではなく、それ以前にあった日本の加害の部分もしっかり扱っていかなければいけないと改めて感じました。(E)

 

◆各先生方がどのような切り口で1941年12月8日の授業展開をされているのか、大変参考になりました。中学生と高校生それぞれに合った授業方法があり、今後の授業にぜひ活かしていきたいと思いました。

 また、資料の中でも特に興味深かったのが、マレー半島の映像とシンガポールの教科書でした。丸浜先生が映像に流れた場所を歩かれたことがあるというのをお聞きして、実際にその地を訪れ現地の人の声を聞く(難しい部分もあると思いますが)ことで、授業で伝えられることも一段と深まってくるのだと改めて実感しました。(K)

 

◆今回、12月8日のアジア太平洋戦争開戦を、どのように授業で取り扱えばよいのか、諸先生方の実践報告を伺いながら、歴史教育においてどこに自らの立ち位置を定め、何を軸として授業を展開していくべきか、深く根源的な問いを与えて頂いたように思います。また、明確な答えの得にくい問題にどう対処できるのか、今尚、考えさせられています。

 日米だけではなく、アジア、太平洋について取り上げることの重要性を意識することが必要であると報告の中で指摘される中、しかし我々教師のみならず一般の認識としても、日本は米国に敗れたのであり、中国戦線ではむしろ優勢であって中国に敗れたのではないとして、歴史を解釈してきた傾向が非常に強いことを、改めて気づかされました。

 ひとつひとつの日本政府の方針、日本軍の作戦行動に「なぜ」と問うていくこと、歴史的文脈の因果関係に踏み込みながら、知識の定着以上に思考を深めていく授業のあり方を、我々が模索していかなければならないという指摘と、これに対し「非合理なことを合理的に解釈することは難しい」とする反論があり、それは両者ともに真理であると思います。

 歴史的事実を「よかった」「悪かった」という安易な価値判断に委ねて、主義主張を不用意に生徒たちに押しつけることが、いかに危険性を孕んでいるか、教師は常に自覚していなければならないでしょう。同じく、生徒たちが思考を巡らせることのできる余地を残しながら、事実について教えるということ、それも教師の責任に帰するものと考えます。

 うまくまとまりませんが、今回のテーマは非常に意義深く、今後の授業のあり方を、根本的な部分から問い直させるものがありました。報告を頂いた諸先生方に、心より御礼申し上げます。(M)